糖尿病・生活習慣病
糖尿病・生活習慣病
糖尿病はインスリンの作用不足により血糖値が慢性的に高い値を持続する病気です。大きく1型糖尿病と2型糖尿病に分かれており、日本人で圧倒的に多く生活習慣病の一つとされているのは2型糖尿病です。発症には血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌不足に加え、過食、運動不足、肥満、ストレスといった生活習慣が関係していると考えられています。
高血糖が持続すると血管が障害され、身体の様々な臓器に影響を与えます。三大合併症といわれる糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害を引き起こし、冠動脈疾患、脳血管障害、末梢動脈疾患、糖尿病性足病変などの危険因子にもなります。また歯周病、認知症との関連も指摘されています。
2型糖尿病は初期症状がほとんどなく、他の生活習慣病との関連性が深い病気です。糖尿病の進行や重大な合併症を防ぐためにも、健康診断などで糖尿病を指摘された場合は、放置せずにきちんと受診することが重要です。
糖尿病の症状は人によって様々です。初期は自覚症状が乏しく早期発見が難しい病気です。
気になる症状がある方や、健康診断などで高血糖や尿糖を指摘された方は早めの受診をお勧めします。
血糖値は食事の前後や時間帯などによって大きく変動します。そこで安定した血糖値の状態を表す指標として、現在、広く使われているのがHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)です。過去1~2カ月の平均血糖値を反映し、糖尿病の合併症予防のための血糖コントロールの管理に有効とされています。
糖尿病の診断基準は以下になります。
(1)早朝空腹時の血糖値が126mg/dL以上
(2)75グラム経口ブドウ糖負荷試験で2時間後の血糖値が200mg/dL以上
(3)時間に関係なく測定した血糖値(随時血糖値)が200mg/dL以上
(4)HbA1cの値が6.5%以上
1度の検査で(1)〜(3)のうちの1つと(4)が同時に確認された場合、糖尿病と診断されます。
75グラム経口ブドウ糖負荷試験は、当院で実施可能です。糖尿病かどうか正確に診断したいと思われる方も、お気軽に受診ください。
急性合併症と慢性合併症があります。
高度なインスリン作用不足により引き起こされる急性の代謝障害です。糖尿病性ケトアシドーシスと高浸透圧性高血糖状態があります。ともに、意識障害を引き起こし、直ちに治療を開始しないと生命に関わります。
細小血管症である網膜症、腎症、神経障害と大血管症である冠動脈疾患、脳血管障害、末梢動脈疾患、糖尿病性足病変があります。これらの疾患を予防するためきちんと治療を受け、合併症を予防していくことが重要です。
網膜の血流障害などで出血、白斑、浮腫などをきたし視力障害を引き起こし、最終的には失明に至ることもあります。糖尿病と診断されたら、自覚症状がなくても定期的に「眼底検査」を受け、良好な血糖コントロールを継続的に行っていくことが大切です。
腎臓の腎糸球体血管に障害を引き起こし、蛋白尿が出現し、最終的には腎不全となり、人工透析が必要な状態に至ってしまいます。早期の腎症では尿からアルブミンが出現するため、蛋白尿が出ていない場合は尿中アルブミの検査を定期的に行います。継続的な血糖コントロールと定期的な尿検査を行っていくことが大切です。
多発神経障害と単神経障害があります。多発神経障害が多く、主に両足のしびれ、痛み、感覚低下、異常知覚などの症状が出現します。血糖コントロールが重要です。自覚症状がある場合、早めに医師に相談しましょう。
心臓を栄養する冠動脈が、動脈硬化により血行障害が引き起こされると、狭心症、心筋梗塞を発症します。糖尿病の前段階(予備群)の境界型糖尿病でも既に冠動脈疾患のリスクであり、糖尿病は冠動脈疾患の重大なリスクです。糖尿病患者では、神経障害のため冠動脈疾患の特徴的な症状である胸痛がはっきりしないこともあり、むくみなどの心不全症状などで発見されることも多く注意が必要です。また発見された時にすでに冠動脈の多枝病変を認め進行している場合もあり、早期発見が重要になってきます。
脳血管が詰まる脳梗塞が多く、糖尿病は脳梗塞の危険因子です。同じく脳梗塞のリスクである高血圧を高率に合併することから、さらにリスクは高まります。小さな脳梗塞が多発することが多く、軽い麻痺症状を繰り返して、脳血管性認知症を発症することもあります。その予防としては、早期から血糖コントロールを良好に行い、併せて高血圧の治療をしっかり行っていくことが重要です。
1型糖尿病では食事療法に加えインスリンの必要量が不足しているため、インスリン注射によって補う治療が中心となります。2型糖尿病では食事療法、運動療法、薬物療法の三つが柱となります。
糖尿病において食事療法は治療の根幹となります。炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素をバランスよく摂ることが大切です。具体的には「糖尿病食事療法のための食品交換表」(日本糖尿病学会)という表を利用し栄養バランスの良い食事を摂ります。2型糖尿病の場合、厳格に食事療法を行えばそれだけで血糖コントロールができる可能性があります。医療機関で医師や栄養士から指導を受け栄養バランスのとれた食事の仕方を覚えるようにしましょう。
運動で体内に余分に溜まったエネルギーを消費することで血糖値が下がります。また、インスリン感受性が高まり、血糖コントロールがしやすくなります。運動療法としてはウォーキングや自転車、スイミング、ジョギングなどの有酸素運動を1回20~40分、週に3回実施します。週末に集中して運動するといった方法よりも、できれば毎日行える運動を選びましょう。
経口血糖降下薬を用いる内服療法と、インスリン・GLP-1製剤などを注射する自己注射療法の二つがあります。近年、糖尿病治療薬は大きく進歩しており、SGLT2阻害薬、GLP‐1受容体作動薬などが登場しています。これらの薬は低血糖を起こしにくく、体重を減らす効果が期待できます。どの薬物をいつから開始するかは、患者さんの糖尿病のタイプや合併症の進行程度などによって、総合的に判断して決められます。
糖尿病の治療には患者さんの自己管理がとても大切です。当院では糖尿病とその療養指導に関して幅広い専門知識をもって、患者さんが適切な自己管理が行えるように援助します。
・糖尿病について(病気と検査内容の説明など)
・糖尿病の治療について(食事療法、運動療法、薬の飲み方など)
・インスリン自己注射を始められる方への留意点
・血糖自己測定について
・低血糖/シックデイ/フットケアについて
・糖尿病と口の中の健康について
・日常生活の注意点と相談
ご自身の生活スタイルに合った食事療法を続けていくためには、管理栄養士による「栄養指導」を活用することも有効です。
食事療法が身に付いてうまく血糖をコントロールできている方も多くいらっしゃる一方、懸命に食事療法に取り組んでいても、思ったように効果が出ない、何をどう改善すれば良いのかよく分からない、と感じている方もおられます。こうした食事療法の問題点を管理栄養士とともに解決していくのが栄養指導です。医師の指示のもと、糖尿病や脂質異常症・高血圧など食生活の改善が必要と判断された方に対して、管理栄養士による栄養指導を行っております。